「Founder with Kids」という言葉に惹かれて──1時間の対話から得た気づき
自分にとっての最初のポッドキャストedamametalkを友人二人とやっていた頃に、知ったSarah K. Peckという女性。
連続起業家である彼女は、自身の体験をもとに「Startup Parent (当時はStartup Mom)」というメディア・コミュニティをつくる、プチインフルエンサーのような存在だった。
その彼女が、最近、「Founder with Kids」という新しいコミュニティづくりを模索している、というのを彼女のLinkedInで知った。
昨年末にプロトタイプとして立ち上げた、このコミュニティをさらにアップデートするべく、ユーザーインタビューをしているという。
私ってFounder?という不安はあったものの、一応昨年個人で法人を設立(Found)したし・・・Sarahがファシリテーションする場に直接参加する機会もそう多くないだろう、と思い、「1時間のユーザーインタビューに参加してくれる人募集」のGoogle Formに回答した。
そんな珍しい体験からの振り返りのエントリー。
なかなかセットで聞かない二つの単語が並ぶことのインパクト
まず最初に思ったのは、この「Founder with Kids」という言葉のインパクト。
“Founder”という言葉だけだと、シリコンバレー的なスケール感、資金調達を繰り返すスタートアップの創業者、みたいなイメージが先行して、自分はそこには入らない、と思ってしまう。
でもそこに ”with kids”がつくだけで、「ステレオタイプ」がいい感じに揺さぶられる。
新鮮さが印象に残り、そして「それってどういう感じ?」といった好奇心がくすぐられる。
最近「自分が聴いているポッドキャスト」をアップデートした時に追加したBusiness Dads(キャリアでの成功も父親としての役割も両立する、がテーマ)のことを思い出す。
「共通の課題」でつながるコミュニティの底力
そんな、Sarahの声かけで開催されたユーザーインタビュー的なZoomミーティング。私が参加した回には14人ほどが参加。東海岸時間での正午開始、同じ場には西海岸からもヨーロッパからも参加している人がいた。
「Founder with Kids」というラベルのもとに集まってはいたものの、属性は本当にバラバラ。
法人化している人もいれば、個人事業主の人もいる。
サービス型のビジネスもあれば、プロダクト系もある。
シングルペアレントもいれば、パートナーと共同で育児している人もいる。
創業1年目の人もいれば、20年目の人もいる。
それでも、「子育てしながら(誰かに雇用されるのではない形で)事業をやっている」という共通項があるだけで、想像以上に会話が噛み合って、共感が多い場となった。自分がやっているJWN(日本人女性 x ニューヨーク)とそこは少し似ている気がした。
そこで、改めて感じたのは、コミュニティをつくるときの“くくり方”の大切さ。
広すぎても話が散らばるし、狭すぎても母数が少なくなる。
この「Founder with Kids」は、そのバランス感覚が絶妙だった。
とはいえ、こういうzoom上の対話やbreakoutセッションで盛り上がる、というのと、コミュニティとして継続的に何かが(コミュニティマネージャー的な存在の人・組織に過度に依存せずに)広がっていく、という仕組みをつくるのはまた次元が違う話なので、多分Sarahもユーザーインタビューをしていろいろ思考錯誤をしているのだろう。
そこらへん、「コミュニティ」の要素を事業化することが大変なのはAcumen時代から感じていることなので、むしろSarahがその難しさを突破してくれないだろうか、とちょっと思ったりする。
今のところ彼女はコミュニティの入り口をかなり狭いものにして質を担保している気はして、それは、自分が来月から参加予定のcohort-based learning programとも似ている(これについてはプログラムが始まってから書く)。
起業家としてのSaraの在り方に学ぶ
もうひとつ印象的だったのが、Sarah自身の起業家としての姿勢だった。
今回のZoomイベントも、プロダクト改善のためのユーザーインタビューの一環とはいえ、Linkedinの告知の仕方から、忙しいスケジュールの中でこぼれおちないように、念入りに色々な形で参加希望表明者にリマインダーを送り。
当日は1時間という時間を一ミリも無駄にしない素晴らしいファシリテーション(場の設定含む)。加えて終了直後のフォローアップのメールからLinkedin Groupの立ち上げ、その場で出てきた印象的なquoteの言語化・公開まで、スーパー生産性の高いearly stage 起業家としてのmaster classを見せつけられたという感想を抱いた。
既に昨年の後半からベータ版を動かしていて、そこからのブラッシュアップのために、5回ほどこうした対話を重ねているという。
イベント中もずっとメモを取りながら、我々が好き勝手に話すことを真剣に聞き、ときに追加の質問を投げかけ深めたり、アドリブでその場で出てきたことを扱ったり。
終わったあとに「このフィードバックをもとにまた形を見直す」と宣言していたのも印象的だった。
「ユーザーの声を聞こう」なんてよく言われるけれど、実際にそれを継続的にやり続けるのは簡単じゃない。
やりたいこと・イメージしているプロダクトが先に立ってしまったり、ユーザーの声に出会う前に自分で出した結論・仮説に執着しすぎてしまったり。
でも彼女は、一人ひとりの声をていねいに拾って、それを前に進むエネルギーに変えていた。
少なくともそのように伝わってきたし、プロダクト云々だけじゃなく、課題というwhatに関する自分の仮説や前提を全部横に置いてもう一度情報収集してこよう、という感じすらした。
という感じで、たった1時間のzoom meetingへの参加だったけれど、たくさん色々な気づきを無料でいただいたなぁ、というありがたい機会だった。
Founder with Kidsは今後どうなるのかなー。現時点でのLPはこちら。