「ベストセラーで読み解く現代アメリカ」をアメリカで読む

大学院を卒業した直後に日本へ一時帰国をした2013年。渡辺由佳里さんの「ジャンル別 洋書ベスト500」(Amazon.co.jp)という書籍の存在を知った(2013年8月のツイート)。こんな大量の洋書を読み続けて、それを日本語スピーカーの読者向けに継続的に発信している人がいるんだ、と衝撃を受けて以来、渡辺さんのtwitterをフォローし、メルマガを購読し、色々な形で彼女の発信内容に触れ続けてきた。最近だと彼女のcakes.muでの発信を見ている人も多いかもしれない。

そんな渡辺さんが今年の年初に表題の本を出版された。『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)渡辺由佳里(著)Amazon.co.jp Kindle版もあり)。2015年から始まったNewsweekニューズウィーク日本版のコラムシリーズ「ベストセラーからアメリカを読む」での連載内容を中心に、厳選された洋書65冊に関するエッセイを織り交ぜながら「アメリカのいま」を伝えてくれている、とても面白い一冊だ。

英語圏の友人に「今こういう本を読んでいてね」というと「えー、何それ面白い、自分も読みたい」と言われる。

英訳して英語圏の人にも読んでもらえたら面白そう・・そう思ってしまう素敵な一冊で、5年または10年後とかにPart 2は出ないだろうかと思ったりもする。

そんなこちらの本では「アメリカのいま」が以下の大テーマに沿って紹介されている:

  • アメリカの大統領

  • アメリカの歴史

  • 移民の国、アメリカ

  • セクシャリティとジェンダー

  • 居場所がない国

  • 競争社会の光と影

  • 恋愛と結婚

  • アメリカと日本の読者

  • 民主主義のための戦い

その本の「はじめに」の文章が素敵なので、興味がある人はぜひ洋書ファンクラブという彼女のサイトに掲載されているこちらを読んでほしい。(「はじめに」+目次+選ばれた65冊のタイトル一覧あり)。以下一部抜粋:

これまで何度か「人生の転機」について質問を受けたことがある。 

60年ほどの人生において転機はいくつもあったが、現在の私に影響を与えた最大の出来事は、私が5歳のときに小学校の教師だった母が『少年少女世界の名作文学』シリーズ(小学館、全50巻)を定期購入し始めたことだった。 

私はこれらの本が読みたくて小学校に入学する前から自学で文字を習い、この全集から故郷の田舎町の外に、大きな世界があることを知った。そして、いつかその大きな世界を訪問したいと思った。

 (中略)

アメリカでベストセラーになる本が優れているとは限らない。だが、多くの国民が何に関心を寄せているのかを垣間見ることはできる。だからこそ、本の内容だけでなく、ベストセラーという現象の背後にある社会情勢を考えることが重要なのだ。世界中のいろいろな業界で働く人たちと私が交わすのは、そういう会話だ。話題になるのはノンフィクションだけではない。小説も、時には児童書も話題になる。 - 「ベストセラーで読み解く現代アメリカ」> はじめに、より抜粋

冒頭に「読みたい本が増えて困ることを保証いたします!」とある通り、そもそも本を一冊完読することがなかなかできない上、洋書の完読はさらに苦手な私でさえ「これは読みたい」とブックマークすることになった本がいくつもあった。

アメリカという国で生活する人間として、移民二世としてニューヨークで育ってきたパートナーを持つ人間として、アメリカと日本の両方の国籍を持つ子供の親として、今の時代を生きている女性として、世界各地に存在する様々な「格差」・「聞こえざる声」の存在や課題解決に向き合おうとしている人たちから刺激を受け続けている人間として、たくさんのものをもらうことができた一冊だった。

『ベストセラーで読み解く現代アメリカ』(亜紀書房)渡辺由佳里(著)

この本の内容がまとめられたのはおそらく2019年の後半。

そのあとのアメリカでは#BLMムーブメントの再台頭やCOVID-19関係の出来事はもちろん、イランとの緊迫状況や中国との貿易摩擦といった外交トピックや、最高裁が下した注目判決結果のいくつか、そして11月に向けた選挙ネタ、とすでに盛り沢山。個人的にはKobe親子のヘリ事故やMichael Jordanを追った力作ドキュメンタリーTheLastDanceなども印象に残る。

本当に各方面でお騒がせでダイナミックな国、アメリカ。

でも、だからこそ色々な発信内容から目が離せない。

アメリカの話に限らず、渡辺さんの洋書ファンクラブの発信内容はとても面白く、おすすめ。

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