「教育分野のインタビュー&ライティングゼミ」を受講して(後編)ー この記事を書き終えて見えてきた3つの学び
このエントリーでは、このインタビュー&ライティングゼミで印象的だった学びを、3つにまとめておきたい。
① 媒体によって、書き方も内容も変わる
2時間のインタビュー内容は約1万字の書き起こし。具材としては十分すぎるものの、最終的には4分の1くらいの長さの記事にしたい。
何を残し、何をカットし、どんな順番で届けるのか。
これは「誰に向けて」「何を伝える媒体なのか」という軸がないと、相当難しいプロセスだということを改めて痛感させられた。
なるほど、こういうものなのかと。
逆に、軸があると、文字起こしから生まれた具材の間をつなぐものとして何を加えるべきか、も見えてくる。
ここらへんが気ままにダラダラ書けるブログとはまったく違う体験だった。
媒体のミッション、ビジョン、想定読者の“読みたい理由”。それを理解した上で構成を練るプロセスは、私にとって新鮮だった。
② 編集者としての役割と、“鏡”としての役割のバランス
インタビューの時間は、コーチングにも少し似ていると感じた。
比較的抽象度の高い(open-endedな)問いを投げる
返ってきた言葉に耳を澄ます
そこで出てきたものを受け止める
深めたり、広げたりする問いを重ねる
そして理想を言えば、相手が話しながら何か新しいことに気づいたり、思考が整理されたりする瞬間があれば嬉しい。
私の場合、取材相手の先生はメディアに取り上げられることもある方だったので、他のとこに書いてあることの繰り返しにならないように、新しい話が聞けるといいな、という目的意識もあった。
そして執筆段階では、できるだけ誠実にその人の言葉を届けたいという気持ちはもちろんある。一方で、媒体のミッションもあるし、想定されているコア読者もいる。自分が届けたいメッセージもある。
そのためには、編集者として全体の流れを整え、読者に伝わる形に、ストーリーとして“組み立て直す”必要もある。
そのバランスをどう取るか。
このゼミで一番よく考えた部分かもしれない。
③ AIツールの活用と限界
最後に、一番書きたいことがこれ。
録音の文字起こしそのものはAIツールが助けてくれた。でも、そのあと「ざっくりした目次」を作ってもらった段階で、すでに違和感だらけのアウトプット。
インタビューライティングは、話された順に議事録のように並べるのではなく、 “どんな構成で、どんな順番で、どんなメッセージとして届けるか”というナラティブをつくる作業。
だから、構成づくりの段階で、AIがつくるサマリーや目次はどこか人間味がなく、「いや、そうじゃないんだよな…」という感覚が最初から拭えなかった。
ためしに、自分が構成をつくり、伝えたいメッセージもきめ、文字起こし内容を材料に、具体的に本文をつくるように指示をするという実践も試してみたが、どこか“生きた感じ”にならない。
何度か試しておもったのは、インタビューライティングにAIを活用するには、(おそらく)相当精密な工夫が必要だということ。
特に、インタビュー相手へのまなざしや、読み手に届けたいメッセージへの思い、自分が書くときに自然とにじむ温度感——こういう微妙なニュアンスは、現時点ではプロンプトで完全に再現しきれない。(または自分がかけている時間の何倍もプロンプトのデザインを工夫しなくてはいけないのかもしれない、自分はそれだったら自分で自分の言葉でゼロから書きたい、ってなるタイプ)
そして原稿が自分の手を離れたあとには、
編集チームの目
インタビュー相手である神武先生の目
先生の所属組織の広報担当者の目
と、異なる立場の視点が重なる。
そうやって今回の記事は生まれた。
「この表現はどんな印象を与えるか」
「このエピソードは適切か」
「読み手にどう届くだろう」
といった観点で磨かれていくこの“掛け算”は、AIだけではまだ再現が難しい・・少なくとも私は今回の経験からはそう感じた。
インタビュー記事がひとつの形になるまでには、人の思いと視点が何層にも重なっている。今回のライティングは、そのことを強く実感する時間にもなった。
そんな感じで誕生した記事はこちら。興味があればぜひ読んでみてほしい(&興味がありそうな方にも共有していただけると嬉しい)。
公開された記事はこちら→宇宙開発の世界から、大学教授の道へ。JAXA出身、小学校校長も務めた先生が伝えたい、肩の力を抜いて、“分からなさ”を共に楽しむ教育 (教育現場のWow!WORK(ワオワーク)by 先生の学校)
P.S. 先生のことが読める他の記事でおすすめはこちら:「教育って基本は無力ですよ」甲子園優勝を果たした森林監督と、宇宙開発・小学校校長を経験した神武教授が語る、教育の新たなフェーズ(DIAMOND ONLINE 2024年2月15日)
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