それ、もしかして“感情の操作”?──Gaslightingという英単語と家庭でのリアル
以前、「Thrive(スライブ)」という英単語に出会ったときのことを書いたことがある。
耳にはするけど、意味がふわっとしていて、日本語には訳しづらい言葉。
調べると「成長する」「活き活きと生きる」みたいな説明が出てくるけれど、実際の使われ方はもっと感覚的で、自分の言葉に落ちるまでにちょっと時間がかかった、そんな単語。
あの単語のように、日本語の訳が直感的に出てこない英単語というものがある。今回はその一つ、「gaslighting(ガスライティング)」について。
彼との喧嘩がある時に「gaslightingしないでよ」とか「それ、gaslightingじゃない?」と指摘されることが少なからずあり、笑。
トリガーされた時についついやってしまう自分の癖を反省するためにも、少し整理してみたいと思ってこれを書いている。
Gaslightingとは
簡単に言うと、Gaslightingとは、「あなたの感じていること、間違ってるよ」と、相手の現実認識を揺さぶるようなコミュニケーションのあり方のこと。
された側は、自分の感情や感覚に自信が持てなくなり、知らず知らずのうちに「自分がおかしいのかも」と思ってしまうようになる。
例えば、こういうフレーズが典型的:
「そんなふうに感じるなんて変わっているね」
「その記憶、ちょっとズレてるんじゃない?」
「それは全部、考えすぎだよ」
「そんなことで怒るなんて、本当に繊細・センシティブだね」
こういった言葉を繰り返し受けると、言われた側はじわじわと影響が積み重なる。
自分の感覚を信じられなくなる
モヤっとした違和感は“私のせい”と思うようになる
心の居場所がなくなる
つまりgaslightingとは、相手の「感じる力」「判断する力」を奪ってしまうコミュニケーションであり、そこには見えにくい暴力性が潜んでいる。
この単語の由来
そもそも私がgaslightingという言葉に出会ったのは、彼との口論の中だった。
「You are gaslighting me」と言ってくる彼。
「いや、よく言ってる意味わからないし」と反発する私。
渦中ではイライラしているから、その言葉の意味を冷静に考える余裕もない。でも後から調べてみたら、映画が語源になっていることを知ってびっくりした。
1944年のアメリカ映画『Gaslight(邦題:ガス燈)』
あらすじ(ざっくり):
舞台はロンドン。ある女性(妻)が夫とともに暮らし始めるのだけれど、夫は彼女を精神的に不安定に見せかけるため、さまざまな細かい操作をする。
そのひとつが「ガス灯の明かりをわざと暗くする」こと。
妻が「灯りが暗くなってる気がする」と言うと、夫は「そんなことはない、君の気のせいだ」と否定する。
これを繰り返されるうちに、妻は「自分の感覚のほうがおかしいのかもしれない」と思い始めてしまう。
この映画のプロットが、社会的にも注目され、「相手の現実認識を揺さぶることでコントロールする手法」として、後に“gaslighting”という心理用語になったそう。
・・・😨
Emotional Manipulation(感情的操作)という全体像
調べてみると、ガスライティングは「Emotional Manipulation(感情的操作)」という大きなカテゴリーの中のひとつらしい。
しかもそれは、特別な誰かが悪意を持ってするものというより、誰でも無意識にやってしまう“クセ”のようなものでもある、とも。
ChatGPTに聞いてみたところ、感情的操作に含まれるものとして、Gaslighting以外にもこういうものがあるらしい(全て網羅されているかは未確認):
Gaslightin: 相手の感覚を否定する→「それくらいで疲れたの?大げさじゃない?」
Guilt-tripping: 罪悪感を利用する→「私だって我慢してるのに」
Silent Treatment:沈黙で圧をかける→無言で反応しない、あえて避ける
Triangulation:他人と比べる→「◯◯さんの旦那さんはもっと手伝ってるよ」
Projection: 自分のイライラを相手にすり替える・投影する→「あなたがピリピリしてるから雰囲気悪いんでしょ」
Blame-shifting: 責任転嫁→「全部、あなたのせいじゃない?」
いやぁ、耳が痛い。
仕事の場では、相手の世界観や感覚を尊重したいと気をつけているつもりでも、家庭内ではその意識がどこかに吹っ飛んでしまう瞬間がある。
そしてその“被害者”になるのは、大抵すぐ隣にいる人生のパートナーである彼。
正直、Gaslighting、Guilt-tripping、Blame-shiftingは、自分に余裕がないときに陥りがちなパターンだと思う。
また、恥ずかしながら、5歳児に対してもGaslightingとTriangulation(⚫️⚫️くんはもうとっくに寝てる時間だよ)もやっているな・・。とも反省・・。
さらに振り返ると、自分が小学生のときや、精神的に今よりもっと未熟だった20代のときに、「感情的操作」を意図的にしたような行動の記憶もチラホラある。加害者としての記憶は、物忘れが激しい私でもなかなか忘れられない。恥ずかしい過去である。
まとめ:その場で反応する前に、いったんキャッチしたい
gaslightingも含めた感情的操作の多くは、相手のためにならないだけでなく、自分自身が「本当は大切にしたい関係」からも遠ざかってしまう。しかも、「操作」を意図していても、大体そんなのはうまくいかない。
多くの場合、相手は(それが5歳児でも)それを嗅ぎつけ、スルーする、または反発する。だから何もいいことが起きない。
もちろんトリガーされているときに完璧に冷静でいるのは無理なことも多い。
とはいえ、「自分はこういう『感情的操作』をやりがちかも」というのを日頃から自覚したり、反応してしまっているときに「まてよ、今言おうとしていることはgaslighting(またはその他の感情的操作のアプローチ)だろうか」と思えるといいな・・、とここまで書いておもったりした。
ちなみに私のブログで最近高い頻度で読まれているこのエントリーもここに貼っておく。
ゴットマン博士による「関係性を破壊する 4つのコミュニケーションの悪癖」(2021年)
みんな色々思うところがあるのだろう。
一人じゃない、笑。
頑張っていこう。
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