パーパス・目的意識が芽生える三つのパターン

Happiness 2.0シリーズ(Hidden Brainというポッドキャストより)

以前ブログに書いた「自分の好きなpodcast」の一つの、Hidden Brainという番組。最近「Happiness 2.0」というシリーズで、こんなタイトルの5つのエピソードが配信されてきた(日本語は自分の適当な意訳)。

今回のエントリーは、そのシリーズの3つ目のパーパスに関するものからの備忘メモ。

パーパス・目的意識

番組のホストであるShankar Vedantamが対話していた相手はコーネル大学のAnthony Burrow教授(website)。

余談:今回調べてみてわかったのだけれど、彼が所属しているCollege of Human Ecologyという学部は自分が卒業した学部。人に関する学科が複数ぶら下がっている学部で、大昔は「家庭科」的な学問を主に扱っていた場所(なので、Cornellの中でも、女性が相対的に多いCollegeだったと記憶している - 2000年代前半の話だけれども)。自分はそこで「人・チームが働く空間のデザインが与える影響」といったものを勉強した。

この教授の専門の一つは以下のようなテーマ。だから今回の対話相手として選ばれたのだろうと想像する。

why having a sense of self-direction – or purpose in life – serves as a psychological resource for those who cultivate it. - (前掲の大学のwebsiteより)

自分らしさや人生に対する目的意識を持つことが、それらを育んでいる本人の「心理的なリソース」になる、ということについて

彼がディレクターを務めるPurpose and Identity Processes Labという研究所のwebsiteのホームページにはセネカの言葉も引用されていた。

If one does not know to which port one is sailing, no wind is favorable” - Seneca

どの港に向かっているのか自分が分かっていない時は、どんな風も役に立たない - セネカ

2020年に「The Ecology of Purposeful Living Across the Lifespan: Developmental, Educational, and Social Perspectives」(amazon)という本も書いていた彼。

最近日本語で「パーパス」という単語を聞くのはビジネス文脈だったりすることが多いけれど(〜経営、という感じで使われたり)、彼の捉える「パーパス」の世界はビジネス・キャリアの世界に限らない。

そんなBurrow教授との対話の後半は「パーパス・自分にとっての目的意識ってどう育まれていくんだろう」という話だった。

「遭遇する・発見する・見つける」ではなく「見出す・育む」

このエピソードでは、テニスプレーヤーのアガシの話が登場する。

彼は(多くの人が知っているように)テニスの才能に恵まれていた一方で、テニスのことが嫌いだった。エピソードでは、そんな彼が時間をかけて、テニスプレーヤーとして生きるという自分の選択を自分の歩むべき道として受け入れていった経緯(”taking ownership over his choices”)が紹介されている。

アガシについてはブログにまとめてくださっている方がいたので興味がある方は→「OPEN アンドレ・アガシの自叙伝」 アンドレ・アガシ 著

エピソードで引用されていたアガシ自身の言葉が素敵だったので、ここに再掲。

ポッドキャスト内では本人の声でのナレーションが挿入されているのでリアリティがあって、静かにグッとくるものがある。

…taking ownership over my choice.

Ownership meant feeling grateful for being and having the chance to start over.

Climbing out of a hole that I dug for myself is when I began choosing to believe that each of us have a plan for our life, purpose to fulfill, body of work to create, and reason to be.

・・・自分の選択に主体性を持つこと。

自分にとってそれをするということは、今が在るということ、そしてやり直すチャンスがあることに感謝するということでした。

自分が落ちてしまった、自分で掘った穴から這い上がることができたのは、「私たち一人ひとりには歩むべき人生があり、果たすべき目的があり、創造すべき仕事があり、そして自分が存在する理由があるのだ」と信じようと決めた時でした。

Purposeは主体性のある関わりを通じて育むもの(”purpose requires active engagement with the ‘soil’(土壌))であるということ、どっかに探しにいったら見つかる、といったものではない(”no evidence suggest that purpose can be found or picked up by going out int he world”)ということをShankarとBurrow教授が言っていた。

アガシの「choosing to believe」のフレーズが力強く印象に残る。

「遭遇する・発見する・見つける」ではなく「見出す・育む」

そんなBurrow教授によると、パーパス・目的意識が芽生えていくパターンは大きく3つあるという。

  1. 一つ目はコツコツ続けている中で雪だるま的に膨らんでいくパターン:特徴は”gradual sustained attempt”の積み重ね。好きだから、またはパッションがあるから、趣味のような形で続けていたら、いつの間にか弾み・モメンタムがついて、大きくなって、自分のパーパスになっていたパターン。

  2. 二つ目は外的ショックがきっかけとしてあったから形成されていったパターン:一つ目と違って、「この体験があって、自分はこの道に入った」ということが明確に言えるパターン。

  3. 三つ目はソーシャルラーニングをもとにしたパターン:周囲にいる、パーパス・人生の目的意識が明確な人たちの身近にいる体験を通じて間接的に自分のパーパスが育まれていったパターン。

1.と2.は自分の主体的な行動から始まり、行動していることに対して本人が自覚的であるのに対し、3.のパターンは本人も自覚すらしてない形でいつのまにか「種」が自分の中に入り込んでいる、というのが面白い。

その3つのパターンがあることを学びながら思い出したのが前職で作ったstorytelling for changeというオンラインコースのこと。そのコースの中にあった「今の活動が自分のやるべき・やりたいことだと明確になった時のことを元に、人の心を動かし、行動を喚起するメッセージのあるストーリー作りをしましょう」という課題・ワーク。

「そんな瞬間あったかな・・」とネタを見つけることに難しさを感じる人たちのことを想定して、ワークの指示の書き方を工夫したことがあった。

今思うと、その工夫が必要だったのは、オリジナルのコンテンツ(もともと対面型の研修コンテンツで、社会起業家向けにデリバリーされていたもの)の想定ユーザーの大半が2つ目のパターン経験者だったのに対して、MOOCを作っていた私たちは1.や3.パターンの学習者も想定しなくてはいけなかったからだったかも、と。

Acumen Academyの無料オンラインコース(仲間と一緒に受講するモデル):Storytelling for Change

そんな自分自身も人生におけるパーパスが何かは一言でうまく言えないけれど、自分はこの1.と3.のパターンが混ざっているタイプなのではないかなと思ったりしている。

そういう意味で、今回三つのパターンがあることを知って自分自身がホッとしている部分もあったりしている。

そっか、色々な芽生え方・育み方があるんだな、と。

エピソードの前半はパーパスや目的意識を持ちつつ生活することがどう自分たちの心・あり方に良い効果をもたらすか、といったことを話していたので、興味がある方はぜひ。

補足:Hidden Brainについて

  • 2015年にNPRという非営利の米国公共ラジオ放送制作会社の傘下で始まった番組で、2020年に独立(NPR’s ‘Hidden Brain’ goes independent|Aug 2020)

  • 人や社会の動きの背景に存在する「心・感情・思考」といったテーマにまつわる有名な研究や理論を分かりやすく届けてくれて、かつ、その世界でのアカデミアの理解がどう進化し続けているのかを気軽にキャッチアップさせてくれるのが個人的に好き

  • また、エピソードで紹介・引用されている研究などもきちんとサイトにまとめてくれている

  • 以下はHidden Brainのミッション・ビジョン

Hidden Brain explores the unconscious patterns that drive human behavior and questions that lie at the heart of our complex and changing world.

Hidden Brainは、人間の行動の背景にある無意識下のパターンや、複雑で変化に富む我々の世界の核心に存在しているテーマに向き合っていきます。

Every episode of Hidden Brain aims to help people get to know themselves a little better, to think of their inner worlds with less judgment and more curiosity.

Hidden Brainの各エピソードは、人々が自分自身をもう少しよく知り、自分の内面に対して批判的になりすぎずに、より好奇心を持って考えていくことをサポートすることを目的としています。 https://hiddenbrain.org/mission/

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