「人を育てる」と自分の性格特性との関係性

数年振りにキャッチアップした先輩に

子育てが楽しい、って言い切れるのはいい事だね

と言われた。

確かに自分は今のところ、子育てを結構楽しみながらやっているところがある。もちろん、子供が言葉をたくさん使うようになり、難しくなっていくことはこれからどんどんあるのではないかな、と思っているものの、若葉マークのママとして基本的にこれまでの日々を楽しむことができた背景を少し考えてみることにした。

おそらく大きく3つの要素がありそうで、重要度の高い順から①サポーティブなパートナー・家族の存在、②理解のある職場の存在、そして③自分の性格特性、なのでは、と思うのでそれについて書いてみる。

その上で、今後はここを気をつかなくてはいけないと思っている、ということも自戒を込めて記録する。

①サポーティブなパートナーと家族の存在

まず、生まれてから毎日パパが家にいるという恵まれた環境があった・ある。もちろん2020年に起きたコロナがきっかけなのだけれど、在宅勤務を続けていたパパはとうとうフル在宅勤務の人となった。子供が生まれてから3年弱、想定しない形で一時的に離れ離れになってしまった3か月間を除いて、毎日一緒にいて二人三脚でずっと子育てをしてきている。

しかも、ただいるだけじゃなく、彼は子育てに関する物理的・精神的負荷を積極的に折半してくれるパートナーであり、そのことのインパクトは非常に大きかった・大きいと思っている。彼と離れ離れになってしまった時期は実家にいたので、その時は両親の手厚いサポートがあった。

人生初めての一大プロジェクトである子育てを始めていくにあたって、こういったサポートシステムの存在が自分+そして自分のあり方を通じて子供に与えた影響は決して少なくなかったと感じている。

過去エントリー:「今のパートナーのどんなとこがいいの?」

②多様な働き方を許容する職場環境

産後4ヶ月で在宅勤務下で復帰した前職のAcumenも、その後に関わることになったCoachEd(コーチェット)も、とても寛容で心地よい環境を提供してくれた場所だった。抱っこ紐で子を抱えながらのzoom会議、画面外・OFFで授乳しながらの会議への音声参加、寝かしつけに難航する暗闇の中から参加する日本時間の朝会など、自分としてはギリギリのところでのジャグリングではあったし、大事なミーティング時にドアの向こうで子が泣き出す声を聞きながらハラハラしつつコーチングセッションを終了させたり、研修のデリバリー中、実家の両親に子供と外に散歩に行ってもらうなど、色々なことがあったものの、全体的にサポーティブな同僚・環境に恵まれていたからできたことばかりだった。

自分は「働き価値を発揮すること・人や社会とつながっていること・大きな目的に向かってチームとして行動していくこと」が好きな人間なので、こんな感じで柔軟性・多様性を許容してくれる就労環境であったことは、自分のwellbeingにとってとても重要なことだったと感じている。

過去エントリー:(もちろん自分が適応していったこともあった)コロナ禍の出産・育児・転職を経て変わったこと

先日、親になる直前とtransition into parenthoodの時期に職場でどういう体験をするかが子供の発達に与える影響について触れているHBRの記事も見た。改めて自分が置かれていた環境を提供してくれた様々な人に感謝の気持ちを抱かずにはいられない。

2023年1月31日のHarvard Business Reviewの記事。タイトルは「親の職場での体験が子供に与える影響」

10年以上、370の世帯(”low-wage, working-class families”)を継続的に調査した研究結果の紹介。

結論「employee’s workplace experiences immediately before and during the transition into parenthood can have long-lasting effects on the development of their children」


③自分の性格特性

そして、性格特性。数ヶ月前、大学院のリーダーシップの授業で自己認識を深めるために受けたIPIP-NEO(International Personality Item Pool-NEO)(big 5を元にしたアセスツール)の結果を見ながら思うことを書いておく。

IPIP-NEOは以下の5つのドメインについて0-100でスコアが算出されるもので、私は今回その存在を初めて知ったのだけれど、結構その分野では広く知られている古典的なツールのもよう。心理学者ポール・コスタとロバート・マクレーによって開発された、広く使用されている確立された尺度であるNEO人格目録に基づいてるらしい。以下のドメインにおいて、さらに6つのサブドメインがあり、それにも0-100でスコアが算出される。

参考:心理学用語:ネオ人格目録改正版(NEO-PI-R) - サイエンス.COM

  1. 外向性:人の外交性、社交性、積極性を測定

  2. 協調性:人の友好性、共感、協力性のレベルを評価

  3. 勤勉さ・誠実さ:人の組織力、信頼性、自己規律のレベル

  4. 神経症傾向:人の感情の安定性、ストレスへの感受性、全体的な感情のバランスを表す

  5. 経験への開放性:人の創造性、好奇心、芸術や新しい経験への評価を反映

6ページにわたる診断結果を斜め読みすると、私は「人と関わるのが好き」で、「あるべきに縛られず(というか縛られたくない)」「ストレス耐性が高い」みたいな要素が浮き彫りになってくる。

このような診断結果は他のツールでも良く出てくる内容なのだけれども、おそらく、これらは「言語コミュニケーションが通じない、新しい生物が突如生活にやってきて、その生物👶を危険からどう守り、成長に必要な衛生環境・栄養素を届けるか」みたいな時に役立っていたのでは、と思ったりする。

例えば最初のドメインである「外向性:Extraversion」のスコアは83と高い。特にサブドメインのFriendlinessというものは95と高くて、赤ん坊・乳児という新しい「友達」に対してルンルンしながら関わっている感じの自分が数値で伝わってくる。

Friendliness. Friendly people genuinely like other people and openly demonstrate positive feelings toward others. They make friends quickly and it is easy for them to form close, intimate relationship

他にも、働きながら子育てという日々はジャグリングの連続でカオスがいっぱいだけれど、自分は「外向性:Extraversion」の別のサブドメインのActivity Levelも87と高かった。要は多動でスピード速く動くのが好きという。ジャグリングやカオスと比較的相性が良さそうな結果。

Activity Level. Active individuals lead fast-paced, busy lives. They move about quickly, energetically, and vigorously, and they are involved in many activities.

他にも「自分には●●ができそうだぞ」という自信(根拠があるかないかは関わらず)の指標となる、自己効力感 Self-Efficacyが89として高かったり

Self-Efficacy. Describes confidence in one's ability to accomplish things. High scorers believe they have the intelligence (common sense), drive, and self-control necessary for achieving success.

一方で、責任感をもってしっかりやる、という律儀な感じを表すDutifulnessは21と低く、ある種のテキトー感がある親、という感じが現れている。それは多分、自分が生まれて初めてのママ業をこなしていくにあたって自分の精神衛生上役立っていた可能性もある(そして、そのせいで、パートナーには色々気苦労をかけていることがあるのも自覚している)

Dutifulness. This scale reflects the strength of a person's sense of duty and obligation. Those who score high on this scale have a strong sense of moral obligation. Low scorers find contracts, rules, and regulations overly confining. They are likely to be seen as unreliable or even irresponsible. Your level of dutifulness is low.

そして、自分は状況や自分のことを客観視することが相対的に得意であり、自分の感情が動きそうになるとき、動いた後の振り返り、思考や行動のパターンをメタ認知するということが習慣化されている。多分そんなことも子育て超初期にはある程度役に立っていたのでは、と思ったりしている。

関連エントリー:自分にとってのトリガー(trigger)を理解する

関連エントリー:新生児ケアの時にコーチングのスキル・マインドセットが役立った話

そんな感じで、これまで楽しくやっていくことができた子育てなのかもしれない。


ただ、どんなものにも表裏一体の性質がある。今後子育て生活の阻害要因となる性格特性もあるような気がしている。特に気になっているのは前述のIPIP-NEO(International Personality Item Pool-NEO)の結果で出てきたこれら:

まずは、「経験への開放性:Openness」内のサブドメインの一つであるEmotionality。私の数値はなんと1。1!!。0-100でスコアが算出されるので、相当低い。簡単にいうと自分は感情の感度がかなり低いという結果である。耐性が高い、と良くいうこともできるけれど、悪く言えば鈍感である、ということ。平均の人が抱くかもしれない感情を、私は感じることが少ないということ。

Emotionality. Persons high on Emotionality have good access to and awareness of their own feelings. Low scorers are less aware of their feelings and tend not to express their emotions openly.

にも「神経症傾向:Neuroticism」のドメイン。ドメイン自体のスコアは3とかなり低いし、その中のサブドメインのAnger、Depression、Anxietyはそれぞれ 4, 5, 10と結構低い。つまり一つ上の鈍感力に加えて、自分自身が怒りや鬱々とした気持ちや不安を感じる傾向がかなり低いということ。自分が普段から感じることが少ないということは、おそらく他人がどう感じるかについての想像力や理解が乏しい人間である、という可能性がとても高いのではと考えさせられる。他人の感じ方に対する想像力を鍛えたり、自分のdefaultはそういう感情面に対する理解が乏しい人という謙虚な姿勢を持ち続けることが重要であるということ。

Low scorers in Anger do not get angry often or easily.

Low scorers in Depression tend to be free from these depressive feelings.

Persons low in Anxiety are generally calm and fearless.

実はこれらは彼と生活し始めたときに一度じっくり学ぶ機会があったことでもある。

自分の感情の振れ幅を大きく超えた場所を行き来する相手を見ながら「そんなことで怒ったりしなくても・・」とか「そこまで気持ちが落ち込むことかい?」と思う気持ちをそのまま率直に伝えることが多くて、自分も相手も不快になることを体験した(自分は相手の感情をneutralに持っていく手伝いがしたいという欲求が満たされないことに対するネガティブ感情)。

自分の普通が他人の普通じゃないんだ、という当たり前のことが腹落ちするまでは、自分の基準で相手に接してしまって「この人は自分の今感じているこの気持ちを理解してもらえない」という気持ちにさせてしまうことが幾度となくあった。そして、そう気づいてからは意識的に、自分基準ではなく、相手が体験しているその時の感情を尊重するような関わり方をするようになっていった(もちろん、自分にゆとりがない時などついつい自分のdefaultが出てしまって冷たい人になることもある)

そんな学びの体験をしたはずなのに、子供相手だとついつい自分のdefault modeが出てきてしまうのを最近自覚し始めている。

「そんな、泣くことじゃないでしょ〜(苦笑)」

「あれ?なんで恥ずかしがってるの(笑)」

「しょうがないでしょ、怒ってても、なくなっちゃったものは戻ってこないよ」

2歳児に対してほぼ無意識のうちに伝えている、こんな声かけ。でもこれって実は子供がその時体感している感情を尊重したり受容するような関わりになっていない・・。

子供が私の話す言葉を理解するようになってきているタイミングだからか、そんなことを最近強く意識するようになってきた。

「人を育てる」ということはダイナミックな関わり合いで、相手は刻々と変化していくから、自分のあり方も相手に合わせて変化させていく必要があることでもある。

自分の息子との育て合いのワルツがこれまでの間スムーズで楽しいものであったことには感謝をしつつ・・・これから相手が進化し続けていく中で自分もちゃんと自分の成長課題に向き合わないとな、と思う日々。そうでないときっとどこかで難しさに直面することになる、そんなことを思ったりする。

mother duck and a baby duck dancing waltz together in brush painting touch

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